さらりとした汁気のないパエリャをご存じでしょう。二つの取っ手がついた金属製の平鍋でつくる最も良く知られたあのパエリャです。鶏肉やウサギの肉を用いたりシーフードや、あるいは野菜のみで作ります。タラとカリフラワーを入れた復活祭の季節のパエリャからジビエ(野ガモや野ウサギなどの野禽類)のパエリャまで。 パエリャの具材には尽きることがありません。
自尊心の強いバレンシア人にとってパエリャのように100ものレシピがある米料理は人それぞれの個性をあらわすもの。テーブルではいつも「何を入れるか」と議論にわきます。
このように見事に具だくさんで、パーティー気分なパエリャは、実は男の料理。にぎやかで力強いこの人気料理は、たいていの場合屋外で、しかも男達が仕切って作られるのです。バレンシアでは「anar de paella」(パエリャでいこう)という表現が日常的に使われることからも、その人気度がうかがえます。しかし見た目に反して作り方は複雑で、パエリャを作るときはどこでもスペシャリストがあたります。火の加減から米の質と種類 (bomba, granza, secreti、代表的な米3種) まで、水加減や油の量など、その一つ一つのバランスが微妙に味を左右するのです。
地方によってそれぞれのパエリャの作り方がありますが、正真正銘バレンシアのパエリャには必ずフェラドゥラ(さやが細く長いインゲン)とガラフォ(太く丸みを帯び、ふっくらとしたインゲン)が使われます。肉には鶏、ウサギの他に野生のカモもいいでしょう。そしてもちろんショネタ(xoneta)やバケタ(vaqueta)と呼ばれる、白い殻に黒縞模様の入ったエスカルゴも。味を引き立てるこの強い味方は市場で高級食材として扱われています。そして近年大人気のシーフードパエリャになるとロブスターなどが重要なアクセントになるでしょう。
どんな具が入ってもオーソドックスなパエリャは皿が脂ぎることなく、米の一粒一粒がさらりとし輝いていなければいけません。アウトドアでつくる場合には、三脚に乗せた鍋の周りにメンバー全員が車座になり、「ボー(boj)」と呼ばれる木のスプーンで鍋から直接すくって食べます。その時には「ポロン(porrón)」(ワインを回し飲みするときに使う細口ガラス容器)のワインで口を湿らせておくのを忘れずに。
同じ鍋を使ったその他のポピュラーなレシピを紹介しましょう。“フィデウア”です。前出のベルガラ氏いわく“米を麺に代えたにぎやかで力強い料理”、つまり米の代わりに異なる太さのパスタを用いたパエリャです。舌ざわりは柔らかく繊細で、具に入るシーフードやサフランによって黄金色になることもあればイカスミで風味をつけて黒く染まることもあります。ガンディア(Gandia)のパエリャコンクールを主催することで有名なレストランやアリカンテの海辺のレストランでは、細いパスタを使ったシーフードフィデウアや太いパスタにあさりを入れたもの、イカで色づけしたイカスミフィデウアなど豊富な種類が見られます。 |