バレンシアの米料理は食の楽しみの集大成ともいえるものです。評論家、アントニオ・ベルガラはこう言っています。「スペイン地中海沿岸域の米料理は中華料理に共通する。違うのはスペインでは米をよりカラフルで遊び心を持って調理する点であろう」。
19世紀終わり頃、バラッカと呼ばれるバレンシア地方伝統のかやぶき屋根の家や農場の小屋で気軽に作られていた庶民の味から、浜辺のスタンドや軽食堂で売られるようになったのがパエリャの始まりです。畑の恵みを受けた素朴ながらも絶妙な味のパエリャは、バレンシアのマルバロサ(Malvarrosa)やポルティコル(Portichol)、アリカンテのアルブフェレタ(Albufereta)の海辺で広がり、今や尽きることのないほどのレパートリーを持つ米料理となりました。
町のレストランや流行の米料理専門店、浜辺にでる屋台で見られる変化に富んだパエリャのレシピは一言で語れるものではありません。リゾットのように汁気の多いものから鍋で煮たもの、土鍋で釜飯のように炊いたり、バレンシアで最もポピュラーなインゲンとカブのパエリャのように深鍋で煮込んだり。さらに深い土鍋でつくられる柔らかいご飯料理、オーブンで焼くものや、上に溶き卵を流してオーブンで焼いたものまで。これらのレシピの原型は既に、1520年に発刊されたロベルト・ノラの料理本「el Llibre de Coch」に見られます。 |