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鍋と煮込み
鍋と煮込み
   
アツアツのバレンシア料理も見逃せません。シチューや鍋ものをひとくちで語ることはできませんが、豚肉や腸詰め、カボチャにアセルガスの芯、麦の粒、ヒヨコマメ、インゲン豆、米などなど、具だくさんが定番。カステリョンの内陸エルス・ポルツ地方からアリカンテの南海岸ベガ・デル・セグーラに至るまで、鍋料理はところにより千差万別のユニークなレシピがあります。

カステリョンでは、野菜、肉、セシーナ(牛の生ハム)を具材にしたモレーリャの名物の煮込み料理として知られる「オリャ・デ・レカプテ(l'olla de recapte)」や、アセルガス、いんげん豆、ブイヨンをベースにした「オリャ・デ・カルデツ(l'olla de cardets)」、羊肉、豚のばら肉、カボチャなどをメインにした「オリャ・バレハーダ(l'olla barrejada)」があります。さらに海岸部のプラナには、「オリャ・デ・ラ・プラナ(l'olla de la plana)」や「オリャ・チューラ(l'olla Churra)」といったこってりした鍋料理もあります。

アリカンテの山岳地帯やバレンシア内陸部の鍋料理は究極のグルメです。栄養満点のコシード(Cocido)はポタージュのように濃厚なスープに、脂肪分が抜けた特上ソーセージの香りが加わり、おそらく最も洗練されたスペイン料理ともいえる一品でしょう。いろいろな作り方がありますが、たいていお祝い事のある時につくられます。それは例えばボカイレントでは特別な祭事にはかかせない名物サン・ブラスのプチェロ(つぼ入りコシード)などに代表されます。

ここでクリスマスつくられるコシード・デ・ナダル(Cocido de Nadal)の食べ方をご紹介しましょう。1日目にまずスープ、肉団子、肉と付け合わせの野菜、腸詰めなどを頂く。2日目にはスープに米を入れて煮ます。最終日には残った細かい肉片にトマト、タマネギを加えて「ロパ・ビエハ」(残り物とあり合わせの材料で作る料理)と呼ばれるものをつくります。この習慣はブラスコ・イバニェスの小説「米と二輪馬車(Arroz y Tartana)」や、テオドロ・ジョレンテ・ファルコの「ある老人の思い出(Memoria de un sesentón)」の中にも登場します。

冬に食べる鍋、ガスパチョ、そしてバレンシア内陸の煮込みは同じ系統の料理と言えます。ここで言うガスパチョはアンダルシアの冷たいスープではなく、例えばアヨラ渓谷やビナロポ、プラナ・デ・レケナや、ウティエルなどでポピュラーなジビエ(野禽類)料理のことです。野ウサギや山ウズラの肉を薄く小さくした中にイースト抜きのパンを入れてとろりとさせて煮込んだシチューで、ジビエのラザニアといったところでしょうか。

ガスパチョは歴史的にはもともと羊飼いの料理として始まりました。この脂肪分が控えめでカロリーが低い料理は、今ではいくつかの町で「モーロス・イ・クリスティアーノ(モーロ人とカトリック教徒の祭)」のシーズンにはかかせないメニューとなっています。よくできたガスパチョはその長い歴史にもかかわらずモダンで斬新な印象さえ与えます。海岸地域では魚介類でガスパチョを作るところもありますが、その歴史はまだ浅く、取り入れられたのは最近のことです。